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劇団温泉ドラゴン×劇団58ROUTE 日韓共同製作『長生炭鉱――生きたかった』アーティストコメントが届きました!(キム・ミンジョン/シライケイタ/コ・スヒ)

6月5日(金)〜14日(日)に座・高円寺1で上演する、劇団温泉ドラゴン×劇団58ROUTE 日韓共同製作『長生炭鉱──生きたかった』。作・キム・ミンジョン、演出・シライケイタ(劇団温泉ドラゴン)、アーティスティック・ディレクター・コ・スヒ(劇団58ROUTE)の3人からそれぞれのコメントが届きました。

『長生炭鉱──生きたかった』は、183名の犠牲者を出しながらも長きにわたり語られることのなかった炭鉱水没事故の史実をもとに、韓国のキム・ミンジョンが物語を書き、日本のシライケイタが演出を手がけ、出演者には日韓の俳優を起用、両国の言語で上演する作品となります。

劇団58ROUTEは、俳優として『焼肉ドラゴン』コ・ヨンス役で受賞歴もあり日本でも広く知られているコ・スヒが23年に旗揚げした劇団であり、本作でコ・スヒはアーティスティック・ディレクターを務めています。

80年以上語られることのなかったこの史実に、日本と韓国のアーティストたちはどう向き合い、なぜ今この作品を作るのか。3人の言葉をお届けします。

            

 ステートメント 

◉ キム・ミンジョン(作)

「韓国と日本の演劇人が出会い、共に舞台を作るとしたら、どんな物語を書くべきかを考えるのに多くの時間を費やしました。そうして「長生炭鉱」の話に出会うことになりました。84年前、水が流れ込んだ暗い坑道に共に閉じ込められた韓国と日本の炭鉱夫たち、そして彼らの遺骨を引き上げることに心を寄せた宇部市の市民団体の人々と韓国人遺族たちの思いを、少しでも作品に込めたいと思いました。長生炭鉱水没事故は、強制徴用で連れてこられた136名の朝鮮人労働者と日本人炭鉱夫47名が、一瞬にして海底炭鉱の崩壊により命を落とした事故です。事件は戦時中であるという理由で、二次被害を防ぐという理由で隠蔽されていました。1970年代に宇部市のある郷土史家の著書に記録されるまでは……。その後84年が経った現在、民間ダイバーによって発掘された遺骨はわずか二体に過ぎません。炭鉱夫たちは水面の上へ引き上げられることを望み、現在の人々は水面の下にいる人々を引き上げたいと願っています。この作品には日本語と韓国語が共に存在します。言語の違いは壁を作りますが、互いを理解しようとする心が加わると、ある瞬間に壁は崩れます。ただ同じ人間であるという自覚だけが残るのです。だからこそ、この言語の違いという不便さを、どうか楽しんでいただけたら。」

              

◉ シライケイタ(演出/劇団温泉ドラゴン)

「この企画は、劇団58ROUTEの代表であるコ・スヒと劇団温泉ドラゴンの、長年にわたる友情が結実した、いわば我々の演劇活動における一つの到達点だと思っています。知らない過去を知る、知らない文化を知る、痛みを分かち合う、悲しみを共有する、苦しみを乗り越える、そして明るい未来を共に目指す。決して簡単ではない道のりですが、我々にはそれができると信じて、10数年間お互いに励ましあい、いつか共同制作を実現させたいと約束してきました。いつか光が差す未来がやってくると信じ、またそのような未来を次の世代に手渡したい一心で、この作品を共同制作致します。キム・ミンジョンさんの書いた言葉を日本人の私が演出し、日韓入り混じった俳優陣が両国の言葉で演じます。我々の稽古場には、文化と環境の違いを乗り越えようとする信念と、他者を理解しようとする誠意に満ち溢れています。山口県宇部市で活動する「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」(*)の井上代表をはじめとする皆様からも多大なる後押しとエネルギーを受け取ってまいりました。
精一杯お届けいたします。どうか劇場で目撃してください。お待ちしています。」
(*)長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会 https://www.chouseitankou.com/

                  

◉ コ・スヒ(アーティスティック・ディレクター/劇団58ROUTE)

「私と温泉ドラゴンとの長年の信頼が、まるで奇跡のように共同制作という形へとつながりました。何を語るべきかを模索する中で、長生炭鉱を題材として選びました。忘れられたことと、忘れたことは違います。長生炭鉱は韓国では記憶される機会すらなく、日本では長い間沈黙されてきました。その二つの沈黙の間に、この作品があります。
韓国の作家が書き、日本の演出家が舞台に乗せ、両国の俳優が共に作り上げていくこの作業は、文字通り最初から最後まで共同で作り上げる企画です。お互いの違いを理解し受け入れていく過程そのものが、この作品の核心です。それぞれの場所から見つめ、時にはお互いの場所になってみること——それだけで共同制作の意味として十分であり、それこそが長い沈黙を破ることだと思っています。」


                         

 プロフィール 

グレーの背景の前に立つキム・ミンジョン。デニムシャツに黒のインナーを着用し、正面をまっすぐ見つめるポートレート。

◉ キム・ミンジョン Kim Min Jeong
1974年生まれ。記憶と関係、アイデンティティを繊細に探求し続けてきた劇作家。在学時に執筆したデビュー作『家族ワルツ』が、第7回国立劇場新作戯曲フェスティバルで当選。実話を基にして書かれた『海霧』は、2007年に劇団演友舞台で公演され、その年の韓国演劇ベスト7に選ばれる。
その作品はつねに、時代の断面と人間の内面を真正面から見つめさせる。傷と記憶、関係と亀裂——その狭間に宿る声たちを見逃さず、舞台の上へと引き上げてきた。今作では、歴史の沈黙の中に沈んだ名前たちを、ふたたび舞台の言葉として呼び起こす。その眼差しは変わらず、歴史の隙間に埋もれた声たちへと向けられている。


窓際のソファに腰掛けるシライケイタ。ダークスーツにネクタイを着用し、落ち着いた表情でカメラに向かうポートレート。

◉ シライケイタ
1974年生まれ。演出家、脚本家、俳優。桐朋学園芸術短期大学在学中に、蜷川幸雄演出『ロミオとジュリエット』のパリス役で俳優デビュー。その後2011年より劇作・演出を開始し、13年には文化庁・一般社団法人日本演出者協会主催「若手演出家コンクール2013」にて、優秀賞と観客賞を受賞。17年、第25回読売演劇大賞 杉村春子賞を受賞。劇団「温泉ドラゴン」代表。23年より座・高円寺の芸術監督を務めている。

                   

【劇団温泉ドラゴン】
2010年結成。劇団員はいわいのふ健、阪本 篤、シライケイタ、筑波竜一、原田ゆうの5人。創作した舞台芸術作品を通じ「生と死」「人を愛するということ」「国家とは」といった人類普遍のテーマに挑み、問いかけ、掘り下げる。日本国内のみならず、海外の表現者や観客と交流し、国家や文化の違いを超えて理解しあえる上質な作品を作ることが目的である。
近年では、原田ゆう作『悼、灯、斉藤』(2023年)がNHK-BSプレミアム「プレミアムステージ」で放送され、第27回鶴屋南北戯曲賞にノミネートされるなど、その芸術性と社会性が高く評価された。続く『痕、婚、』(2025年)も、第33回読売演劇大賞・上半期ベスト5 作品賞に選出されている。

                

稽古場にて、劇団58ROUTEのロゴが描かれた青い看板を背景に、テーブルに向かって話すコ・スヒ。オレンジのニットにデニムのサロペットを着用。

◉ コ・スヒ Koh Soo-hee
1976年、韓国・ソウル生まれ。演出家、翻訳家。98年に劇団コルモッキルに入団し、翌年デビュー。俳優、演出家、そしてプロデューサーとして韓国と日本を行き来しながら活動してきた演劇人。2006年のアジア演出家ワークショップをきっかけに日韓交流の扉を開き、2008年初演の日韓共同制作作品『焼肉ドラゴン』への出演を通じて国際共同制作の経験と芸術的な専門性を積み重ねる(第16回読売演劇大賞優秀女優賞受賞)。2023年に劇団58ROUTEを創団し、日韓舞台芸術の架け橋として活動中。

【劇団58ROUTE(극단 58번국도)】
俳優・演出家のコ・スヒが設立した韓国・ソウルの演劇団体。異なる時代や言語を生きてきた人々の物語を舞台上で交差させ、個人の記憶や感情がいかにして現在の私たちへとつながっていくのかを探求している。日本の現代戯曲を発掘・翻訳・再構成し、韓国の観客の感性の中で再び息づく演劇として創り上げるとともに、絶えず消費されていく物語があふれる社会の中で、しばし立ち止まり、他者の人生を通して、いま私たちが立っている場所や関係性をあらためて問い直す創作を続けている。58ROUTEとは、日本の鹿児島から沖縄まで続く日本最長の国道からインスピレーションを得て、「境界を越える物語」を創作の中心に据えて活動している。

                  


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