人権方針・ハラスメント防止ガイドライン人権方針・ハラスメント防止ガイドライン

杉並区立杉並芸術会館(座・高円寺)
人権方針・ハラスメント防止ガイドライン

杉並区立杉並芸術会館(座・高円寺)
指定管理者:合同会社syuz’gen
2026年4月1日制定


座・高円寺について

杉並区立杉並芸術会館(以下「座・高円寺」という)は、演劇・舞踊等の舞台芸術を創造し、発信するとともに、区民に多様な文化活動の場と機会を提供する、地域に根ざした芸術文化活動の拠点施設です。

優れた舞台芸術の鑑賞機会を提供し、舞台芸術の普及・向上を図る環境をつくるとともに、全ての年代の区民を対象とした文化活動や交流の場を提供しています。また、地域の振興とまちづくりの視点を持ち、高円寺地域の個性と結びついた文化の創造と発信を行い、区民との協働による施設運営を進めています。

こうした地域に根ざした芸術文化の拠点施設として、すべての人の人権が尊重され、誰もが安心して芸術文化に参加できる環境を整えることは、私たちの重要な責務です。


はじめに

舞台芸術は、人と人との関わりの中で生まれ、それらの様々な関係性が、作品に豊かさをもたらします。だからこそ、その関係性の質が問われます。

ハラスメントは、個人の尊厳を傷つけ、人間関係を破壊し、創造の可能性を奪う行為です。すべての人が対等なパートナーとして尊重され、安心して自分の力を発揮できる環境こそが、優れた舞台芸術を生み出す基盤となります。

座・高円寺は、ハラスメントの発生を防ぎ、万一発生した場合には迅速かつ適切に対応します。そして何より、人権が尊重され、互いを認め合える劇場文化を、関わるすべての人々とともに育んでいきたいと考えています。

このガイドラインは、禁止事項を並べた規則集ではありません。座・高円寺に関わるすべての人が、より良い関係性を築き、より豊かな芸術体験を共有するための指針です。


1. 人権方針

1.1 基本理念

座・高円寺は、舞台芸術を通じて人々の心を豊かにし、社会とつながる劇場を目指しています。地域に根ざした芸術文化活動の拠点施設として、子どもたちをはじめ全ての年代の区民、そして劇場に関わり、訪れるすべての人々が、その出自や立場にかかわらず、基本的人権を尊重され、個人の尊厳が守られる環境が不可欠です。

私たちは、すべての人が生まれながらにして有する基本的人権を尊重し、個人の尊厳を守ることを最優先の価値とします。いかなる理由があろうとも、芸術表現や創作活動を口実に人権侵害を正当化することは断じて認められません。

座・高円寺は、基本的人権を尊重し、人種・肌の色・思想・信条・宗教・国籍・民族・出身・性別・ジェンダー・年齢・障害・性自認・性的指向・婚姻状態・家族構成・社会的身分・雇用形態などによる差別や、各種ハラスメントやいじめ、いやがらせなど、個人の尊厳を損なう行為は「しない・させない・見のがさない」という姿勢で取り組みます。

舞台芸術は、多様な人々の創造性と協働によって成り立つ集団芸術です。真の芸術的創造は、すべての人の人権が尊重される環境においてこそ実現されるものです。私たちは、すべての人々にとって、安全で安心できる劇場環境を築き、区民に愛され親しまれる施設として、地域とともに歩んでまいります。

1.1.1 芸術表現の自由とハラスメント防止について

座・高円寺は、芸術表現の自由を擁護します。舞台芸術は、社会を映す鏡として、時に暴力、差別、葛藤、矛盾を描き出します。作品の中でこれらのテーマを扱うこと、それらを通じて人間や社会の本質に迫ることは、フィクションだからこそ可能な重要な表現行為であると考えます。

作品内容と創作プロセスは別のものです。本ガイドラインは作品の内容を規制するものではなく、創作プロセスにおける人と人との関係性を対象とします。暴力や差別を描く作品を創ることと、稽古場で暴力やハラスメントを行うことは全く別の問題です。

過去、「演出のため」「役作りのため」「芸術のため」という言葉が、現実のハラスメント行為を正当化する言い訳として使われてきました。本ガイドラインは、そうした言い訳を許さず、すべての創作現場を安全で対等な場にすることを目指します。表現の自由と人権の尊重は、対立するものではなく、共に実現されるべきものです。

1.2 各事業における取り組み

◆主催事業

座・高円寺が企画・実施するすべての事業において、人権尊重とハラスメント防止は妥協することのできない基本原則です。芸術創造の現場は、自由で創造的であると同時に、すべての参加者にとって安全で尊厳が守られる場でなければなりません。この両立こそが、真に優れた舞台芸術を生み出す土台であると私たちは考えます。

座・高円寺では、公演制作から教育・普及事業まで、多様な事業を展開しています。プロフェッショナルなアーティストが集う創作現場も、子どもたちが初めて舞台芸術に触れるワークショップも、それぞれに固有の配慮が必要です。参加者の年齢、経験、立場、背景の違いを踏まえ、各事業の特性に応じた具体的な防止策を講じます。

ハラスメント防止の基盤づくり
  • 事業開始時に各事業ごとのガイドラインを共有し、関係者全員の理解と協力を得ます
  • 対話を重視した創作環境づくりを推進し、互いを尊重するコミュニケーションを実践します
  • 人権が尊重される環境こそが、芸術的な挑戦と創造性を最大限に引き出すことを、創作に関わるすべての人と共有します
いつでも相談できる体制
  • 匿名でも利用できる相談窓口を整備し、周知を徹底します
  • 相談しやすい雰囲気づくりを心がけ、早期発見・早期対応を実現します
  • 相談者のプライバシーと安全を最優先し、不利益が生じないよう保護します
  • 問題が深刻化する前に対処できる予防的な取り組みを重視します
◆提携公演・貸館事業

座・高円寺は、区民をはじめ多様な文化活動を行う方々に施設を提供し、創造と発表の場を支える役割を担っています。貸館・提携事業においても、人権尊重とハラスメント防止の取り組みは主催事業と同様に重要です。

すべての施設利用者の皆様に、本人権方針及びハラスメント防止ガイドラインの内容をご理解いただき、遵守していただくことをお願いします。利用開始までに本方針への同意を確認させていただくとともに、必要に応じて情報提供や相談支援を行います。

座・高円寺は、地域の芸術文化拠点として、利用者の皆様が安全に創作活動に取り組める環境を守る責任があります。そのため、施設利用期間中のハラスメント事案については、以下のように対応いたします。

対応の段階
  • 相談・情報提供:ハラスメントの疑いがある事案を把握した場合、まず事実確認を行い、利用者に適切な情報提供と改善に向けた協力を要請します
  • 警告と改善指導:事実が確認され、利用者による自主的な改善が見られない場合、文書による警告を行い、具体的な改善策の実施を求めます
  • 利用許可の見直し:警告後も改善が見られず、被害が継続または深刻化している場合、劇場の安全な運営を守るため、やむを得ず施設使用許可の取り消しを含む措置を講じることがあります
  • 今後の利用制限:悪質な事案や再発が認められた場合、今後の施設利用をお断りする場合があります

座・高円寺は、すべての利用者の皆様とともに、誰もが安心して文化活動に参加できる劇場を維持していきたいと考えています。ご理解とご協力をお願いいたします。

1.3 ステークホルダーとの対話・協議

座・高円寺は、実際のまたは潜在的な人権への負の影響に関する対応について、関連するステークホルダー(劇場職員、出演者、スタッフ、劇場利用者、観客、地域社会等)との対話と協議を行うことにより、人権尊重の取り組みの向上と改善に努めます。

地域に根ざした芸術文化の拠点施設として、区民に愛され親しまれる施設となるためには、区民の多様な意見が反映される運営が必要です。そのため、様々な場面での区民との連携に努め、区民との協働を進める視点を持って人権尊重の取り組みを推進します。

また、対話・協議の結果を踏まえ、定期的に本方針及びガイドラインの見直しを行います。皆様からのご意見やご提案を積極的にお聞きし、より良い劇場環境の構築に活かしてまいります。


2. ハラスメント防止ガイドライン

2.1 ハラスメントの定義

2.1.1 パワーハラスメント

①関係の優位性や自らの権力や立場を利用した言動であって、②業務上の必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③就業環境を害するもの、この3つを満たす場合にはパワーハラスメントに該当します。また、立場の上下の関係性に関わらず、パワーハラスメントに該当する場合があります。客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、パワーハラスメントには該当しません。

また、性的指向・性自認に関する侮辱的な言動や、性的指向・性自認に関する望まぬ暴露である「アウティング」は、上記のパワーハラスメントの定義の3つの要素を満たす場合には、パワーハラスメントに該当します。

アウティングについて:

本人の同意なく、性的指向や性自認を第三者に暴露することを「アウティング」といいます。アウティングは重大なプライバシー侵害であり、本人に深刻な精神的ダメージを与えるだけでなく、孤立、差別的な扱い、さらには生命の危険にもつながる可能性があります。たとえ悪意がなくとも、本人の同意なく性的指向や性自認について第三者に勝手に開示することは許されません。なお、アウティングがパワーハラスメントの定義の3つの要素を満たす場合には、パワーハラスメントにも該当します。

具体例:
  • 身体的な攻撃:暴行、傷害(殴る、蹴る、物を投げつけるなど)
  • 精神的な攻撃:暴言、侮辱、脅迫、名誉毀損(人格を否定する言葉、大声で怒鳴るなど)
  • 人間関係からの切り離し:隔離、仲間外し、無視(長期間別室に隔離、集団で無視するなど)
  • 過大な要求:業務上明らかに不要なこと、遂行不可能なことの強制(仕事の妨害、不可能に近いノルマなど)
  • 過小な要求:能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事、仕事を与えないこと(合理性のない嫌がらせ、仕事を与えず隔離するなど)
  • 個の侵害:プライベートな事柄への過度な立ち入り(私生活の詮索、監視、許可のない撮影など)

2.1.2 セクシュアルハラスメント

性的性質を有する言動(性的な関心や欲求に基づくもの、性別により差別しようとする意識、性的指向や性自認に関する偏見等)により相手に不利益を与えること又は性的な言動により相手の就業環境を害することをいいます。

すべての人が被害者にも加害者にもなり得ます。「セクシュアルハラスメントは異性間の問題」と誤解されがちですが、被害者・加害者の性的指向、性自認、性のあり方を問わず発生します。

具体例:

性的な関心、欲求に基づくもの

  • 食事やデートにしつこく誘うこと
  • 性的な内容の電話をかけたり、性的な内容の手紙・Eメールを送ること
  • 身体に不必要に接触すること
  • スリーサイズを聞くなど身体的特徴を話題にすること
  • 性的な噂を立てたり、性的なからかいの対象とすること
  • 性的な内容のメッセージや画像の送信

性別により差別しようとする意識等に基づくもの

  • 「男のくせに根性がない」、「女には仕事を任せられない」などと発言すること
  • 性的指向や性自認をからかいやいじめの対象としたり、性的指向や性自認を本人の承諾なしに第三者に漏らしたりすること(アウティング)

2.1.3 モラルハラスメント

言葉や態度、身振りや文書などによって、相手の人格や尊厳を傷つけたり、精神的に傷を負わせて、相手がその場にいることを断念せざるを得ない状況に追い込んだり、現場の雰囲気を悪化させることをいいます。

具体例:
  • 他者の容姿、身体的特徴、人間性や能力を否定・侮辱し、相手の尊厳を傷つけるような言動
  • 他者を人種、国籍、セクシャリティなどの属性などにより差別する言動
  • 他者に不安や恐怖を与え、そのことで相手を支配・コントロールしようとする言動
  • 心理的な圧力や脅迫、嫌がらせ、仕事の妨害など職場環境を悪化させるような言動

2.1.4 妊娠・出産・育児等に関するハラスメント

職場において、上司や同僚が、従業員の妊娠・出産及び育児等に関する制度又は措置の利用に関する言動により従業員の就業環境を害すること並びに妊娠・出産等に関する言動により当該従業員の就業環境を害することをいいます。

業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものについては、ハラスメントには該当しません。

2.1.5 カスタマーハラスメント

観客、劇場利用者、外部関係者等から、劇場職員、出演者、スタッフに対して行われる著しい迷惑行為をいいます。正当な要求や苦情とは異なり、社会通念に照らして明らかに相当性を欠く行為や、執拗で悪質な言動により、業務に支障をきたし、従業員等の就業環境を害することを指します。

具体例:
  • 長時間にわたる執拗なクレーム
  • 大声での威圧的な言動や暴言
  • 職員、出演者、スタッフ等の人格を否定するような発言
  • 性的な言動や身体接触
  • SNSでの誹謗中傷や個人情報の拡散
  • 業務に関係のない個人的な要求
  • 写真・動画撮影の強要
  • 差別的な言動

座・高円寺は、カスタマーハラスメントから職員及び関係者を守ることを重要な責務と考えます。悪質なカスタマーハラスメントが確認された場合、警告、退場要請、利用制限、法的措置等、状況に応じた適切な対応を行います。

2.2 防止のための取り組み

2.2.1 基本的な心構え

舞台芸術の創作には、様々な立場や役割の人々が関わります。演出家、俳優、スタッフ、制作者、そして観客。それぞれが異なる経験、価値観、感性を持ち寄ることで、作品は豊かになります。

座・高円寺の事業に関わるすべての関係者は、創作活動上の対等なパートナーであり、基本的人権を有する個人として互いの人格を尊重することが求められます。

  • 相手を一人の人間として尊重する

    役割や肩書きの前に、一人ひとりが尊厳を持った人間であることを前提とします。自分と異なる価値観や感じ方を否定せず受け止めること、相手の境界線を尊重し、「ここまでは大丈夫だろう」という思い込みを避けることが重要です。

  • コミュニケーションの質を高める

    言動の受け止め方には個人差があることを理解し、相手がどう感じているかを確認する姿勢が必要です。「冗談のつもりだった」「良かれと思って」という意図は、受け手の感じ方を変えるものではありません。相手が拒否・嫌悪している言動は決して繰り返さないことが原則です。

  • 良好な関係性の維持

    長期間にわたる協働関係においても、互いへの敬意を忘れないことが求められます。親しさや信頼関係は、相手の尊厳を軽んじる理由にはなりません。良好な関係があると思い込まず、常に相手の立場を考慮した行動を心がけることが、創造的で持続可能な協働の基盤となります。

2.2.2 組織としての取り組み

座・高円寺は、ハラスメント防止を一過性の取り組みではなく、継続的な組織文化として根付かせていきます。

継続的な学びと対話
  • 定期的な研修や勉強会を通じて、ハラスメントへの理解を深めます
  • 事例の共有や議論を通じて、より良い対応方法を学び合います
  • 社会の変化や新たな課題に対応できるよう、常にアップデートしていきます
相談しやすい環境づくり
  • 相談窓口の存在と利用方法を繰り返し周知します
  • 相談者のプライバシーを厳格に保護します
迅速で適切な対応
  • 相談を受けた際は、まず相談者の安全を確保します
  • 公平な事実確認を行い、関係者の声に丁寧に耳を傾けます
  • 被害者の支援と加害者への適切な対処を並行して行います
振り返りと改善
  • 対応した事案から学び、再発防止策を検討します
  • 現場の声を聴き、ガイドラインや体制の改善に活かします

2.2.3 管理者・権威者の責務

管理的立場にある者や権威者は、ハラスメントの発生を未然に防ぐ環境づくりに積極的に取り組む責任があります。

自らの持つ力に自覚的になり、ハラスメントの兆候を察知した際には速やかに対応し、被害者の声に真摯に耳を傾けて適切な措置を講じることが求められます。ハラスメント行為を黙認せず毅然とした姿勢で対処し、安全で創造的な環境づくりに継続的に取り組むことが職責となります。

2.3 相談窓口

座・高円寺の主催事業では、事業ごとにハラスメント相談窓口を設置します。実際にハラスメントが起こっている場合だけでなく、その可能性がある場合や放置すれば就業環境が悪化するおそれがある場合、ハラスメントに当たるかどうか微妙な場合も含め、広く相談に対応し事案に対処します。相談には公平に、相談者だけでなく行為者についても、プライバシーを守って対応します。

相談者はもちろん、事実関係の確認に協力した方に不利益な取扱いは行いません。

相談を受けた場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認し、事実が確認できた場合には、被害者に対する配慮のための措置及び行為者に対する措置を講じます。また、再発防止策を講じる等適切に対処します。